『学校に行かない僕の学校』(著者:尾崎英子氏)
株式会社ポプラ社より、寮付きのフリースクールを舞台に、変化、成長していく中学生を描いた小説『学校に行かない僕の学校』が発売されました📚
良い本への出会いがあるのも夏休みです🍉
本書は、一つ年下の大事な親友を失った出来事から学校に行けなくなった、世田谷在住 の中学2年の氷川薫が、東京郊外の森の中にある寮付きのフリースクールに行くことを決め、そこでの1年半を描いた小説です。
主人公は、大人 3 人体制のスクールの中、小5 ら中3までの子どもが 11 人いる中で、決められた勉強から離れ、自由な環境で日々をすご すなかで、同じ中2の杜田銀河と出水瑠璃とともに、自分自身と対話をします。
身の回りのことは自分で行い、時間割はなく、なにをしても自由。ゲームをしてもいい し、勉強するのも自分次第です。勉強しろと言われないことにやや不安を感じながらも、 薫は同い年の二人と仲を深めながらゆっくりとした時間を過ごし、静かに自分の心に向き 合う。そして、ずっと気がかりだったことを告げるために、ある人に会いに行きます。
そして、自分の好きなことを見つけた薫は、前に一歩を踏み出すストーリです。やがて内面に抱えた問題や甘やかされることの不安やさまざまな葛藤と向き合い、自分の中にある気持ちや誰にも話せない出来事を言葉にできるようになり、聞いてもらえて楽になることを体験し、ついには自分のやりたいことなどの未来、自分を肯定し、自分らしく生きて いる価値を考えられるように変化していきます。
同じ年齢であっても、みんな背景は多様で、親との関係も複雑かつ個別の生きづらさを 抱えています。今の社会ではまだ、子ども本人も親も、小学校や中学校に行かないことを 失敗や挫折と思いこんでしまうことや将来を不安に感じてしまいがちです。
しかし、決してそうではなく、時には逃げることや逃げられる場所が必要で、自分が自分らしくいられ ることのほうが大事だということや、学校に行かなかったからといって将来が閉じられて しまうわけではないということが、本書の主人公の経験と意識を通し、説得力をもって伝 わってきました。
フリースクールの現状は、2023 年 10 月発表の文部科学省による調査結果によると、小・中学校における不登校児 童生徒の数が、約 29 万人と過去最多となっています。
学校に行けない、行かない子どもたちが、年々増え続けているなか、自宅でもない、学校でもない、「学校外の居場所・学び場」 であり、「第三の居場所」として、フリースクールの存在が注目されています。
2017 年に施行された「教育機会確保法」では、「休養の必要性」や「学校復帰よりも社会 的自立」に向けた「多様な学び場」を提供する重要性についても規定されています。
フリースクールは、現在全国に 500 カ所ほどありますが、フリースクールの利用率は約 3.7%だというデータもあります。通信制高校やサポート校、技能連携校や高等専修学校な どがあり、東京都ではチャレンジスクールがあります。その地域の小・中学校と上手く連携していることも多く、フリースクールへの登校が学校の出席扱いとされるケースもあります。
自分の居場所や好きなことを見つられた、主人公の氷川薫のように、それぞれの子どもにに合った居場所や学びの場で、その子らしく歩むことができたらいいなあと思います。
また、同じような悩みをもつ友人や知り合いがもし身近にいたら、声をかけて助けられるようになれたらいいと思います。